ライフサイエンス四方山話

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3349万円の薬

超高額薬「キムリア」
スイス製薬会社ノバルティスから発売された白血病治療薬「キムリア」の薬価が本日決定しました。

www.nikkei.com

1回あたり3349万円。保険適用されることになったので、多くの方は3割負担で、尚且つ高額療養費制度も利用すれば、実質は数十万円の負担で済むそうです。裏を返せば、3000万以上を税金や社会保険料から賄うということですね。
 
画期的な白血病治療薬
一方、「キムリア」は非常に画期的な薬であることも確かです。CART(Chimeric antigen receptor-T cell)療法と呼ばれる遺伝子治療の一種で、癌患者さんの免疫細胞(T細胞)を取り出して、遺伝子改変により癌に対する攻撃力をアップさせたのち、患者さんの体内に戻します。その結果、患者さん自身の免疫力向上を通して癌治療をするのです。自分の細胞組織を利用して自己治癒を目指すという、オーダーメイド型の治療です。想像に難くなく、人一人の一回の治療のために多くの労働力、様々な設備を利用します。さらに製薬会社が研究開発費の回収もしようとすると、莫大な薬価になるようです。人によっては、一回の治療で治る場合もあるようですので、この値段を高いと見るかどうか。。。。
 
医療制度、技術の進化を
現在複数の治験が進んでいるiPS細胞を使った治療なども、このオーダーメイド型になる可能性もあり、費用面での懸念が残ります。日本ではまだですが、アメリカでは「成功報酬型」の医薬品も増えてきています。薬の効き目があった場合のみ、代金が請求されるという仕組みです。今後、こういった超高額薬の登場は容易に予想されるため、日本も本腰を入れた議論が必要になる気がします。ただ、こういった高コストな治療法が本当に素晴らしい場合は、今度は如何にして低コストで実現するか、といった方向に技術は進歩してゆくはずです。