ライフサイエンス四方山話

医療、創薬などライフサイエンスに関する情報を発信するブログです。

遺伝子は必ずしも遺伝しないという衝撃の事実

人の運命は遺伝子だけでは説明できない

これまでヒトの遺伝子は親から子へそっくりそのまま受け継がれ、生まれ持った遺伝情報に抗うことはできないと考えられてきましたが、最新の研究によると実はそうでもなかったようです。遺伝情報が全く同一であるはずの一卵性双生児でさえも、生まれてからの環境や本人の努力次第で、お互い異なる体質へ変化していくとのこと。

 

DNAスイッチこそが、遺伝情報のオン・オフを司る

NHKスペシャル シリーズ人体Ⅱ「遺伝子」第2集 "DNAスイッチ"が運命を変える

www.nhk.or.jp

 放送中に再三登場する”DNAスイッチ”というのがカラクリで、遺伝情報の発現・非発現をコントロールしているそうです。”DNAスイッチ”には様々なタイプのスイッチがあり、記憶力を良くするスイッチや音楽的なセンスを上げるスイッチなどもあるようです。つまり、後天的な努力によって、そのスイッチのオン・オフが可能な体質になれるということでした。さらにはスイッチ調節機能は、世代を超えて遺伝する可能性があるようです。例えば、メタボ体質だった男性が、子作りの期間だけ減量すると、その期間中の精子にはメタボ化する情報が含まれない(メタボに関わる遺伝子がオフになっている)そうな。

 

努力次第でDNAもコントロールできる!

 放送中の山中教授の「教科書を書き換えなくてはいけない」という発言が、この事実のインパクトの大きさを物語っていました。

 これが本当だとすると、運動がすごく苦手な人が一生懸命トレーニングして走ることが得意になったら、その子供は走るのが得意な体質として生まれてくるかもしれませんね。つまり、遺伝子配列はそのまま遺伝しているけれど、発現する/しない遺伝子を決めるスイッチは後天的に獲得できる、ということです。

 確かに、生物の進化の歴史を考えると、徐々に体型や能力を変化させてきたわけですし、遺伝情報が変わるというよりも、遺伝情報の発現・非発現を調節することで環境に適応し続けた、ということなのだと思います。