ライフサイエンス四方山話

医療、創薬などライフサイエンスに関する情報を発信するブログです。

既存薬の転用が盛り上がりそう

はじめまして。このブログはライフサイエンスに関わる雑記をお届けしようと思います。少しでも楽しんでもらえるとありがたいです。

 

早速、最近気になった記事を紹介です。

バイアグラなどが心不全に対する治療効果を示す

https://www.medicalnewstoday.com/articles/325084.php

 

ED治療薬が心不全治療薬に!?

バイアグラは言わずと知れた勃起不全(ED; erectile dysfunction)治療薬です。このED治療薬が心不全の治療に利用できるのではないかという記事で、論文発表もされているそうです

記事の内容を かなり簡単に要約しますと、こんな感じです。

マンチェスター大学の研究者らは、従来ED治療薬として利用されてきたバイアグラシアリスなどの薬が心不全の治療薬になる可能性を示した。

心不全を引き起こした羊に、ヒトがED治療薬として使用する用量と同じだけのシアリスを投与したところ、3週間後には心臓の収縮機能の改善が確認された。

 今回の実験はあくまで羊を用いた実験結果ですが、著者たちはヒトでも同様の作用が期待されると考えています。すぐさまヒトに対して用いるというわけにはいかず、医師と十分に相談が必要であるとしています。(その前に臨床試験が必要な気がしますが)

 

ヒトの心臓に近い、羊の心臓を使って研究をしたようですが、ブタの臓器はヒトに近いと聞いたことがありますが、心臓は羊の方が近いのかな??

 

ED治療薬として用いられてきた薬に心臓のポンプ機能の改善効果がありそう、という内容ですが、バイアグラはもともとは心不全治療薬として開発されていた経緯があるので、当初の適応疾患にもどってきた感じです。

 

AIの導入やiPS細胞と絡むことでドラッグリポジショニングはますます活発化しそう

適応疾患をかえて薬を開発することを”ドラッグリポジショニング(drug repositioning)”と呼んでいますが、最近よく耳にする気がします。こういったドラッグリポジショニングで新しい薬を見つけることのメリットはおおまかに言って2点、「研究開発費を抑えることができる」「上市までのスピードが早い」という点だと思います。基本的に、他の疾患治療を目的で研究開発された薬を転用するわけですが、安全性という意味で臨床試験をパスしている薬が多いので、ある程度の投与量までならヒトに投与しても大丈夫というデータがある薬です。

すでに市販されている薬の隠れた効能を発見しようとAI導入を検討していたり1)、iPS細胞を使った化合物探索2)にも利用されているようなので、これから先ドラッグリポジショニンングがますます活発になっていく気がしますね。

何より、新しい薬ができるだけ安く・早く届けて貰えるようになったら嬉しいです。

 

1) 隠れた薬効 AIが発見、開発費・医療費減に期待https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43945490Z10C19A4TJM000/

2)パーキンソン病の薬、ALSに効果か iPS創薬の治験https://www.asahi.com/articles/ASLCY6JMPLCYULBJ01B.html?ref=newspicks